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ネコの決意(長編です)

今日、ノア(ネコ)のワクチンの注射に行ってきました。本当は去年の10月だったのですが、私の入院などで延び延びになり、ようやく飼い主の義務が果たせました。おっと、うかつに飼い主なんて言っちゃって。ノアは私の同居人であり、兄貴分なのを忘れていました。


ノアが西葛西のわが家へ来たのは、7年前です。生後2か月で体重500g、寝ても起きても、歩いてもこけても、それは可愛らしく子猫の可愛さを全て兼ね備えていましたね。抱っこしながらグーグーと言うと、つられて30秒くらいでぐっすりと眠り、ゴム輪を投げると犬のように全速力で取りに行き、面白がって娘が何回もやるもんだから、可哀想になり『いい加減にしろ!』と、娘に怒ったりしていました。ジャンプが大好きで、箪笥に登ってはベッドの上の私のお腹の上にムササビのように何度も飛んできます。ペットボトルくらいの重さだから何ということないけど、そんなことを毎日やっていましたね。いつの間にか家族の中心になっていました。ノアは、子どものころは本当に甘えん坊のネコでしたね。30分に1回は、抱っこされにやってきて膝の上でゴロゴロ喉を鳴らし、出かけるときは玄関に正座し、悲しそうにニャーと泣きます。娘と一緒に帰ったときなどは、喜び勇んで玄関まで迎えに来て、2人いる姿を見ると、自分だけ1人かと拗ねて噛んでくることもありました。ノアにとって一番は娘で、私はナンバー2でした。娘に怒られてしょぼんと下を向いて歩いてきたのを可哀想に思い、声をかけるといきなり私に八つ当たりして飛びかかってきたりしてましたから。でも、朝娘が出掛けると、私のベッドに移動して一緒に寝ていましたから、無邪気で天真爛漫の性格はノアの生れ持っていた資質でした。



そんな日々に転機が訪れたのは、ちょうど3年前の今頃です。娘が大学卒業して社会人としても一人前になってきたとき、私も自身の身の振り方を考えるようになりました。かみさんが亡くなり、息子も家を出て、娘とノアの3人暮らしでしたが、その生活に終止符を打つ決心をすることにしました。それは、秋田に年老いた母が一人で暮らしていたからです。こうして私は、ノアと離れて一人で秋田に来ました。


2か月ほどして娘から電話がありました。ノアが寂しそうで見ていられないというのです。仕事を終えて帰ってくると、足にまとわりついてニヤーニャー泣きながら離れないし、見る見るうちに元気がなくなっていく、何とかならないかというものでした。話し合いの末、ノアは私が引き取ることになりました。当時私は無職だったし、ほとんど家にいない娘といるよりは秋田でのびのびと生活する方がいいだろうということになりました。娘の住むマンションを出る朝、生れてはじめてカゴに入れられたノアは恨めしそうにニャーと小さい声で鳴きました。新幹線の中も一睡もせず、じっと私を見つめています。少しカゴのふたを開けると、短くニャーと泣きます。どれほど不安な気持ちでいるのか、手に取るように分かりました。家についてもカゴから出ようとせず、怯えています。自分の居場所が分からず、びっくりするくらいのへっぴり腰で歩き回ると、押し入れの中に入りました。食事もせず、トイレにもいかず、泣きもせず、じっと押し入れの中に身をひそめました。私はそこで初めてノアの悲しさを理解しました。人の都合で私と別れ、今度は娘と引き離され、知らないところへ連れて来られてしまった切なさです。


ノン毛布


押し入れから顔を出したのは3日後です。あたりを見て匍匐前進しながら、ご飯を食べにやってきました。見るからにやつれ、哀れっぽい後ろ姿でカリカリを食べています。はじめて見るノアの姿でした。それから数日はそんな光景が続きました。抱っこされに来るどころか、私を見ると怯えたように後ずさりします。人間の裏切り(と感じたのでしょうか)、自分の運命を受け入れきれないネコの姿がありました。それでも、日を追うごとに少しずつではありましたが、押し入れの外に出るようになってきました。でも、エサを食べている時も、タワーで外を見てる時も常に緊張しています。カタと音がすると、すぐに腰を落とし上目遣いに身構えるようになりました。2階にいるのにもかかわらず、玄関に誰かが来る音がすると飛び上がって身を隠します。一番悲惨だったのが、花火大会でした。家の目の前に花火が上がると、猛ダッシュで逃げようとしても逃げるところがありません。よほど抱っこして車で家から脱出しようと思いましたが、結局心身ともにくたくたになり、ますます人間不信になったノアがいました。自分に降りかかる不幸の連続にもう生きていくのも嫌になった、といわんばかりに頑なに押し入れに閉じこもり、少し前までの無邪気で子猫の面影を残したノアの姿はもうどこにもありませんでした。


それから2か月してからのことです。ソファで私の隣に座っていたノアを抱き上げようとした時です。突然、噛んできました。いつもは噛まれてもしょせん甘噛みなので、好きなようにさせているのですが、この時は真剣でした。ギャーと聞いたこともない大声を出し、私の手から逃れようと猛烈に逃げ出しました。壁にぶつかるような勢いで走り回り、一番高い本棚の上に上り、ギャアオーと狼のように吠えました。私は捕まえようとし、ノアは抵抗します。表情や息遣いがエクソシストのように豹変し、大声をあげ、本気で爪を立て、野生のネコのように手の付けられないほど噛んできました。体中の毛を総立ちにして、喉のどこから声を出しているのだろうと思うほど叫びまわりました。私はもう追いかけるのをやめていましたが、睨み合いが10分ほど続きました。赤ちゃんの頃から育てているのに、こんな姿を見るのははじめてでした。隙を見てパッと抱き上げると、今まで以上に抵抗します。手から抜け出そうとするノアを必死で押さえつけ、顔を胸に押し付けました。そのうち四肢を一杯に踏ん張り抵抗していたノアが、だんだんおとなしくなってきました。見ると、ハーハーと犬のように荒い息遣いで、私の胸に顔を寄せています。そして眠ったように目を閉じて、顔を摺り寄せてきました。



その日からノアは変わりました。すっきりとした顔になり、積極的に散歩するようになりました。それでも、2階からの階段を降りるときは、1段降りるごとにニャーオーと大声を上げていましたが、1部屋ずつ制覇していきました。1階のリビングで、スズメを見ながらカッカッカッと威嚇するようになり、お腹を見せて昼寝するようになっていきました。以前と違うのは、男らしくなったところです。顔を合わせると、右の拳をこつんと当てて挨拶します。呼び方も男らしく、ノンちゃんからノンスケに変わり、すっかり秋田の生活になじみました。甘えん坊だった面影はもうありません。


ノンタワー


あの日の出来事は、ノンスケにとって一つの儀式だったんだなと今は思います。過去の全てを振り切り、新しい生活に入るために必要だった乗り越えなければいけないハードルのようなものだった。ノアは決意しました。何も言わず全てを受け入れよう、と。そして大人の男らしいネコに自分を変えていきました。また、ノンスケに教えられちまったなあと思い、そばに行くと哲学者のようにタワーから遠くを見つめています。男らしさに思慮深さも兼ね備えてきたなと感心して顔を寄せると、振り向きざまガブッと噛んできました。間一髪、鼻の難を逃れ、やっぱりノンスケはこれでなくちゃ、と改めて思ったのでした。


参照 ネコの好きなハーブとは? 

    ネコのキャラ弁

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